『30年のシスターフッド』のアメリカ上映ツアー報告by 土井ゆみ (『月刊女性情報』 2006年4月号掲載)
『30年のシスターフッド』(監督:山上千恵子、瀬山紀子、企画:女たちの歴史プロジェクト)は、70年代のウーマンリブ運動に参加した女たちにインタビューをしたドキュメンタリー映画だ。
この映画の英語字幕版が昨年完成して、アメリカ上映ツアーが企画された。アメリカで、日本のリブ運動を記録した映画の連続上映ツアーが企画されたのは、初めてのことではないだろうか。中心になって企画してくださったのは、シカゴ大学で教える山口智美さん。敏腕な彼女の働きで、東海岸と中西部の大学を中心に11箇所を巡る3週間のツアーが瞬く間に準備され、私も出演者の一人としてツアーに招待された。私が参加したのは、ツアー後半のミシガン大、シカゴ大、イリノイ大、セントルイス・ワシントン大の上映会と授業だ。
私たちを呼んでくださったのは、各大学の女性学や日本文化の学部など。一時間弱の映画上映が終わってから、監督と出演者、大学関係者への質疑応答という形式はどの大学も同じだった。そのせいか、各大学の特色が際立ち、白人生徒がほどんどの裕福な大学から、雑然としているが生徒の人種や年齢にバラエティのある大学など、アメリカ社会の縮図を目の当たりにする体験でもあった。
質疑応答で一番記憶に残っているのは、イリノイ大学の小さな上映会に来てくださったアメリカ先住民男性のコメント。
「初期のリブの女たちが、長い時間座って延々と話をした点が興味深い。自分たちナバホの部族内でも物事を決める時に、上から下に決定事項を伝えるというやり方ではなく、ともかく座り込んで延々と話しあって物事を決めて行く」
ナバホとリブの共通点という指摘が、面白かった。つまり、物事を決める時に個から出発させるやり方のことだ。非効率的だったが、あの体験の中にこそ、リブの力と可能性があったのだと、改めて思い返す素晴らしい指摘をして頂いたと思う。
このツアーに参加する前は、少し不安な思いもあった。かつて、大学を含めた既成の権威に疑問を投げつけたリブ運動。本来なら、家庭や街、企業や地域の中で躍動しているはずの運動が、女性学という枠の中で整理/学究されている現状への残念な思いがあったからだ。しかし、今回シカゴ大のノーマ・フィールドさんと山口さんが教える "Feminist Struggles in Japan"の授業に参加し、その印象は変わった。
ノーマさんが授業で率直に問題点を提起し、生徒たちがそれにとまどいなく返答する様子は、学問の場らしい気風があふれ、好感が持てた。学生たちは、この授業の学習結果を伝えるホームページを作り、リブ運動の歴史や印刷物の一部なども記録されている。その中には、私のいたグループが作った懐かしいチラシもあって驚かされた。
これらリブの記録に命が吹き込まれ、若い人たちの暮らしの中で生き返る日がきて欲しい。そんなことを願いつつ、収穫と刺激のあるツアーを終えた。ツアーの様子は
http://sisterhood.exblog.jp/に詳しく報告されている。
セントルイス・ワシントン大学の授業風景。

シカゴ大学の "Feminist Struggles in Japan" クラスのホームページより。
http://femjapan.pbwiki.com/